珍しいクルマの登場

トヨタ センチュリー
でかいです。エンジンはV8のVG45というモデル
ワタクシ、センチュリーを扱ったこともなく、乗った事もありません。
今回修理依頼でエンジンが吹けないというか40キロ越えたあたりから失速気味…この内容での修理に入ります。実際試運転してみて…なるほどガボガボって失速して吹けなくなります。
まずは基本的な点火、燃料、空気と診ていきます。
これ平成8年式でかなり前のモデルです。試運転の時もそうですがなんか失火してるっぽい感じだったのでプラグ点検。

まぁ、焼けはしてる…特別悪くはなさそうけど依頼者に相談して交換してよいとの事なので交換後に試運転。
症状変わらず。
修理というか原因を探る場合は一つづつ潰していったほうが判明しやすいです。
プラグではないとわかったのでデスビかなぁと思い点火時期見ようと暖気させてて軽くアクセル踏み込んでみると…アレ?空ぶかしでもかぶるというか失火みたいな感じ。
高負荷時に失速みたいな症状は点火系統に問題ありそうですがそうじゃないっぽい。
エンジンルームに回り燃料ホースの高圧側を指で握ってみると少し潰れる。もしかして…
古いクルマなのでスロットル部までアクセルワイヤーが伸びてきてますので燃料ホース握ったままスロットルオープン。
燃料ホースが潰れます。燃料が全然足りてなく空洞状態になり、よってホースがペチャっと潰れます。
原因は燃料不足とわかったので燃料ポンプを疑います。ポンプは正常に動いてるようなので燃料の詰まりのようです。
この場合は燃料ポンプと燃料フィルターを交換となります。早速部品屋さんに見積もりと在庫確認。
しばらくして返答がありポンプ58000円ほどで廃盤…燃料フィルターも7800円ほどでこれまた廃盤…でしょうね。古いクルマですのでそうなりますよね。
このセンチュリーの走行距離は25000キロほど、年式の割に距離がかなり少ないです。という事は燃料はいつも入ってるけどあまり乗られてないので年代物のガソリンでアイドリングやショートな走行のみな様で新鮮なガソリンが回らず詰まりが発生してると考えました。
で、いつものように社外品を検索します。
社外燃料ポンプは適合見つかり手配。あとは燃料フィルター、ネットでこれも適合見つかり手配、あとは交換して問題なけれぼ修理完了と思っていて部品が入荷。
念のため古い燃料は1度排出して燃料ポンプを交換。新しくハイオクガソリンを注入します。


交換したポンプ、ポンプ内の小さいフィルターもワニスみたいなのが詰まってました。
また試運転の結果。バッチリです。失速状態はなくなりスムーズに加速します、ヨカッタ!
よし、あとは燃料フィルターを交換して終わりと思い作業入ります。エンジンルーム右側なので作業もしやすいです。
古いの取り出して新しいのセット…セット?ん?合わない。何故?

赤丸はタンクからきてるIN側ホース(フレアナットで接続)、緑丸はフィルター通ってエンジンへいくOUT側ホース(バンジョーで接続)

画像上の金属色が元に付いてたモノ、下の黒いのが新しい社外品。サイズは一回り小さいけど適合確認済みのモノ。
IN側のフレアナットのサイズが違ってます…調べていくと、センチュリーのIN側パイプ径は8mmでM16×1.5サイズ、OUT側はM12×1.25サイズ
社外のフィルターはOUT側は同じサイズ、IN側はM14×1.5サイズ…
違うやーん!
購入先に問い合わせしましたがそれで合ってるはずで出しましたと。いや、合わないのよ。
それからまたネットや他の部品屋さんも調べるも廃盤、在庫無し。新しいほうのセンチュリーのも合わないか調べましたが別物でダメ。
かなーりネット検索しましたがどこにも無い!
このような詰まり気味の状態で燃料ポンプは交換したけどフィルターは交換しないという事はしたくない…
このセンチュリーの燃料フィルター、ほぼセンチュリー専用と言ってもよいでしょう。現役時代は純正も社外もある程度は流通していたと思います。それが今となっては製造しても数個しか売れないはずなので無くなり次第終了となるんでしょうね。
で、この先どうしましょう?となり色々と考え…案として
①、IN側パイプの頭をカット+OUT側のホースをカットしてゴムホースで汎用品を取り付ける。
②、OUT側は合うのでそのままで、IN側のフレアナットをM16に変更する(ナット購入、要フレア加工)
う~んどっちも車両側の加工になるのであまりやりたくない…と悩んでたところジーカーズのスタッフさんとやり取り(こういった加工得意?)していて新たな案が。

純正フィルターはもう使わないので

M16のフレアナット部分だけカット

こうして


赤線のとこをTIG溶接で…

完成!
見た目悪いですが、たぶん世界に1つだけのM14→M16変換アダプター加工の燃料フィルター。ちゃんとパイプも固定されるようにフレア部分まで移植

TIGでやってるので漏れもないし圧力にも耐えられます。

古い燃料フィルターの内部をよく見てましたらやはりベッチョリ詰まってました。
さて装着です、ドキドキしますね。


取り付けもOK、エンジン始動…漏れ無し!
燃料フィルターも無事完了です。
よし、これで終了と思ったらまだありました。
今度はエンジンのかかりが悪い。悪いといっても数秒クランキングするとちゃんとかかる。
ナゼだろうとまた悩む…今度は燃料レギュレーター?いやでもアイドリングも安定してるし排ガスとかも普通…
エンジン切った後の高圧ホースを握ると圧が無い。残圧が無い状態。普通のインジェクション車はエンジン切った後の燃料ホースに残圧があり再始動をしやすくする為に燃料ポンプ付近にチェックバルブ(ワンウェイバルブ)があり燃料の逆流防止をする装着がついてます。
この機能が効いてない感じ。買った燃料ポンプの説明をよく見てみると「この燃料ポンプにはチェックバルブ機能はついてません」だと。
センチュリーの燃料ポンプはチェックバルブ内臓でした。
R32なんかはべっこでポンプの近くにチェックバルブありましたがセンチュリーは一体型でした。
さてどうしようと考えたけどセンチュリーのポンプ付近はゴムホース接続ではなくバンジョーボルト固定ですのでR32とか社外のチェックバルブは取り付けできません。
依頼者に相談したところ、エンジンがかかるなら問題ないとの事なのでこれで修理完了となりました。
まぁ色々とありましたがなんとか調子戻って良かったです。これがディーラーとかだと部品ありません!で終了でしょうね。
たまたま上手くいきましたが旧車でも珍しい車両は大変です。この年式の日産車ならまだ何とかなります。
このセンチュリー、他の部品が壊れた場合は修理は厳しいでしょうね。
この記事を見てセンチュリー修理お願いします。と言われてもお断りする場合がありますのでご注意を!部品が無いんですもん。
無いモノは作るという精神ですが無理な場合もありますので…
ご依頼ありがとうございました。